琉球新報論壇掲載

人手不足の応急的長期的対策

高齢者労働力の活用促進を

 

              県経済は右手に観光客、左手に人手不足明暗が交差している。来県観光客の増加に伴い企業活動は活況だが、他方、 企業の多くが人手不足に苦慮し、対策を模索している。専門家ではないが平素の知見を元に人手不足対策について所見を述べたい。

県経営者協会の人手不足に関するアンケート調査(昨年12月)によると、会員企業(回答132社)の86%が「かなり不足」「やや不足」と回答している。対策として給与の引き上げ(61.4 %)と中途採用の強化(49.2%) を重点に上げ、高齢者採用の強化(8.1%)を検討する企業もある。

 昨今の人手不足は若年労働力の供給不足による労働力需給のひっ迫が背景にある。労働力の供給を増やすことが課題だ。その一策として高齢者(65歳以上)の雇用促進を提案する。

企業の高齢者雇用の現状を見てみよう。沖縄労働局が昨年12月に発表した令和5年「高年齢者雇用状況等報告」によると、「高齢者雇用安定法」が2021年に改正され、「70歳までの高齢者就業確保措置」が企業の努力義務となっている。だが、昨年126月1日現在、実施済の企業(社員規模21人以上)は793社、26.7%である。企業の高齢者雇用への取り組みが遅れている。また、企業(社員21人以上)の常用社員の年齢構成を見ると(上記報告)、社員総数が26万6千154人(令和5年)、そのうち65歳以上の社員は2万3958人で、総社員数の9%に過ぎないすぎない。高齢者雇用に対する消極的な姿勢が伺える。高齢者の就労はどうか。県の総人口は1467480万人(2020年国勢調査)で、その22.6%、33万1404人が65歳以上の高齢者である。「高齢者の就労意向と就労希望年齢」(沖縄労働局「70歳までの雇用推進に向けて」)の資料によると、高齢者の約60%が80歳を超えても働きたいと希望している。だが、実際の就労者は24千人(沖縄労働局20246月)で、働きたくても働き先が見つからない未就労高齢者が20万人以上いると推測される。貴重な高齢者労働力が遊休化しているのが現状である。

そのうえ、少子高齢化が進む。総務省の資料によると20年後の2045年には、県人口は2020年の1467480人から1428千人に減少する。生産人口(15歳―64歳)は現在の60.8%から53.3%に下がり、逆に65歳以上の高齢者比率は22.6%から31.4%に上昇する(総務省統統計局・人口問題研究所)。将来、若手労働力の供給は先細りし、高齢者労働力の供給は増える。若手労働力の需給は一層逼迫ひっ迫する。

以上のように、労働力の需給状況を概観すると、応急的かつ長期的な人手不足対策は高齢者雇用の促進が要になると考える。

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2025年2月1日16:30

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掲載:2月25日(日)